米中はとりあえず関係修復を優先
(WEBRONZA 1月22日掲載:http://webronza.asahi.com/)
中国の胡錦濤国家主席が米国を公式訪問した。今回の訪米の目的は、昨年激化した米中の非難合戦に終止符を打ち、楊外相が言うように「米中関係は正しい方向に進んでいる」ことを演出することにあった。2012年秋、米国は大統領選、中国は「ポスト胡」体制発足に向けた政権移行期を迎える。それまでの間、両国間の外交上の障害を可能な限り取り除き、内政課題に集中したい事情も背景にはある。米側は胡主席を国賓として、バイデン副大統領が空港に出迎えるなど異例とも言える厚遇でもてなし、共同声明にもあるように「協力的な関係」を強調したが、どうやらワシントンの空気を支配している「立場の違い」の方が際立ってしまったようだ。
しかし、もともと両国は、今回の訪米で「新たな成果」を期待していた訳ではなく、シナリオ通り、全体として「関係の修復」を優先するという一定の成果は得られたと言えよう。もちろん、お互いの不信感や根本的な対立構造は消えておらず、今後とも不協和音が太平洋の両端から聞こえてくることは間違いない。それでも、かつてない依存関係にある両国にとって、「米中は協力関係にある」と言える枠内に引き戻す軌道修正はお互いに必要だったのである。
振り返れば米中関係の歴史は、まさに対立と融和の連続である。米中は、第2次世界大戦で同盟国として戦い、朝鮮戦争、ベトナム戦争では一部で戦火を交えることになった。そして歴代の大統領は、選挙期間中から就任時は、国民向けに中国に対して厳しい姿勢をみせながら、1、2年後には必ず融和策に転じてきた。なぜならば、それがアメリカの国益に適うからであった。反共主義者として登場したニクソン大統領は、キッシンジャー大統領補佐官を秘密訪中させ、自ら中国を訪問して米中の和解を実現させた。人権問題で中国を批判したカーター大統領は米中国交正常化を発表。クリントン大統領も人権問題を通商問題とは切り離し、貿易拡大策を展開。当初、中国を敵視する発言を繰り返していたブッシュ大統領は、9.11同時多発テロ以降、江沢民主席をテキサス州の私邸に呼んで会談するなど、中国を「責任ある利害関係者」(responsible stakeholder)として、国際社会関与政策へ転換させた。
オバマ大統領は、当初より中国には厳しい姿勢を見せず、融和策を掲げて登場し、「G2」構想の下で中国との関係強化を目論んだ。しかし、自信をつけた中国は、そんなオバマ氏の思いをよそに、米国の長期的・歴史的な弱体化をみたのか、強硬な態度に出て、米国に対して非協力的とも思われる姿勢を取り続けたのである。オバマ大統領は当初、人権問題や北朝鮮への対応などについて中国を強く批判せず、一定の配慮を見せていた。しかしついに、2009年12月コペンハーゲンサミットでの中国の態度に堪忍袋の緒が切れ、中国熱は一気に覚めたようだ。以降、先送りしていたダライ・ラマ14世との会談を行うなど、オバマ氏の中国に対する態度の変化は明らかだった。
今後も、中国は、国内政治に矛盾を抱えながら自らの体制を維持していくために、多少の国際的な代償を払ってでも強硬な姿勢を貫くことは間違いない。米国も、国内経済の立て直しのために、中国の存在は欠かせないが、来年の大統領選に向け、弱腰な姿勢を見せる訳にはいかない。しかし、過去の米中首脳が歩んできたように、両国の依存関係は強まり、対立したままでいるよりは、より賢明な方策として米中関係を改善、発展させるほうが米中両国の国益に適うという意味での、一本の長い米中関係の路線が今後も消えることはないであろう。
従って、これからも両国はお互いを批判し、また急速に接近するような場面は出てくるであろうが、日本は、その現象だけを見て、米中関係が悪化した、良くなったなどと、感情的に一喜一憂してはならないのである。両国の間には、日米関係にはない、大国同士であるが故の太い糸で繋がっており、一方で日米は、信頼関係に基づく(そうあるべきという願いを込め)重要な同盟国であることを肝に銘じておくべきである。
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