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2010年12月 6日 (月)

中間選挙で変わる米国の環境政策

(WEBRONZA12月6日掲載:http://webronza.asahi.com/

オバマ政権の「グリーン・ニューディール(GN)」に代表される環境政策は、中間選挙での大きな争点にはならなかったものの、選挙での大敗が今後の地球温暖化対策等に大きな影響を与えることは必至である。すなわち選挙を通じて、GNに限らずオバマ政権の政策が必ずしも経済成長や雇用の創出に貢献していない、という判断がくだされ、今後は財政の大幅な支出増につながる政策の実行は難しくなったからである。

 中間選挙では、過去の議論経過に拘らない新人議員が多数増え、連邦政府の支出拡大や規制を嫌う「ティーパーティー(茶会)」が勢力を増した。共和党新人議員の半数程度(ある調査によれば、98人中43人)は、地球温暖化問題の存在そのものを懐疑的に見ていると言われ、また温暖化ガス削減の目玉政策である「キャップ・アンド・トレード」に反対している議員が多く当選した。ティーパーティーの支援を受けてフロリダ州上院選に当選したルビオ氏は、「地球温暖化を正当化する科学的根拠があるとは思えない」と明確に述べている。

 

現在開催されている気候変動枠組条約第16回締約国会合(COP16)も、米国の姿勢は、地球温暖化対策法案の下院での通過を受けて乗り込んだ昨年のCOP15とは大きく変わった。本年、上院は同法案の成立を断念。そして中間選挙の結果を受け、当面アメリカは、長期的に影響を与える環境問題よりも、短期的な経済政策を優先せざるをえない状況だ。COP16で米国は、2013年以降の温暖化ガス削減目標の設定どころか、昨年合意した途上国への支援を含む「コペンハーゲン合意」の実行さえも難しい、との声が聞かれる。

「京都議定書」からの離脱は、米国の単独行動主義の象徴だった。そこでオバマ氏は、ブッシュ政権との違いを際立たせるために、国際協調の下で地球温暖化問題に積極的に取り組む政策を掲げた。これは選挙戦略としては正しい選択であったが、もともと米国が温暖化対策にどこまで本気で取り組むのか、懐疑的な見方は消えていなかった。クリントン政権時代の1997年、上院は、米国の国益を損なうとして「京都議定書反対の決議」を95対0の全会一致で賛成した事実を忘れてはならない。これが米国政治の底辺に流れている国民の声であり、国益重視の考えなのである。環境は大事だが、政策には優先順位があり、国際協調と言っても国益を損なってまでお付き合いする必要はない、ということである。もちろん米国は環境問題に対して意識が低いわけではない。むしろ高いと言えよう。例えば、自然保護運動や車の排ガス規制では世界をリードしてきた実績があることは付け加えておきたい。

 いずれにせよ超党派での関心は、海外に頼らない自前エネルギー源の安定確保である。その意味において、風力や太陽光発電等の再生可能エネルギーは100%国産エネルギーになるのだが、政府の支出増につながるとして、ティーパーティーは原子力発電所も含めて反対の姿勢を示しており、オバマ政権は当面の対策として、石油・天然ガスの自主開発と石炭の活用にも力を入れるものと思われる。

 すでにオバマ政権は、本年になって中間選挙を意識し、現実的な政策の修正を行ってきた。例えば原子力発電については、約30年ぶりとなる発電所の新規建設を後押しする債務保証を決めた。原発には、地球温暖化対策に有効であり、エネルギーの自立、雇用の創出という「大義名分」があった。またオバマ氏は、選挙期間中よりアメリカ沖合の油田・天然ガス開発に関しては環境に配慮して慎重であったが、4月1日、開発にゴーサインを出し、直後にBP社のメキシコ湾原油流出事故で開発を一時凍結したが、10月、当初の計画より前倒しで油田開発の再開を容認した。これら一連の政策変更に政治的意図があるのは明白であり、環境団体からは厳しい批判を受けた。しかし、これが政治の現実であり、良くも悪くも、政治の力学で環境政策まで変わるのである。

 米国の温暖化対策等の取り組みは、今後しばらくの間停滞し、日本を含め世界の環境問題に大きな影響を与えることは必至である。一方で中国は、財力と政治力にものを言わせ、風力発電等の再生可能エネルギーの開発にも更に力を入れるであろう。むしろ中国はこの環境分野でも米国をリードし、政治的発言力を増すかもしれない。日本では、環境問題を重視してきた民主党の対応が注目される。国境を超えて生活に影響する環境問題は、世界が共に歩まなくてはならない共通の課題であり、日本が国際政治の場でリーダーシップを発揮できる数少ないイシューである。温暖化ガス25%削減を華々しく世界に発表した民主党に冷たい視線が投げかけられていることを忘れず、菅総理は環境対策に対して積極的に取り組むべきである。

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