国益に直結する外交に「迷走」は許されない
(WEBRONZA11月23日掲載:http://webronza.asahi.com/)
民主党政権の迷走は、外交面で言えば、ひとえに日米関係という最も重要な外交の座標軸を動かしたことによって招いた結果だと言えよう。まさにそれに尽きる。もちろん座標軸は状況によって変えていくことは当然である。しかし、変化させることによって生じる影響を深く考えず、またその影響を踏まえた新たな総合的な外交戦略を描き実行できる力がなければ、迷走するのは当然の成り行きなのである。
では民主党の外交政策は未熟で、自民党のそれが優れていたかといえば、必ずしもそうとは言えない。今日の状況は、自民党が長年にわたって戦後外交に胡坐をかいてきたツケも大きい。民主党は、米国依存の戦後外交から決別し、新たな外交戦略を構築しようとした意欲は評価できないわけではない。まっとうな政治家であれば、主権国家としての日本の外交を真剣に考えれば考えるほど、政党やイデオロギーに関係なく、米国に過度に依存した戦後のいびつな外交政策を是正したいという意欲に駆られるのは当然なのである。しかし意欲や理想だけでは、現実の外交には通じないことも事実であり、国益に直結した外交では、ならし運転の1年間などと、安穏として許される状況にはないのである。
振り返れば民主党は、二大政党の一翼を担う政党として、自民党とは違う新たな外交政策の基軸を打ち出すことに意識しすぎていた。国会でも、政局がらみの対応が目についた。しかし野党であっても、特に外交は政策の継続性が重要であり、政局がらみで与党との違いを際立たせることが目的になってはならない。しかし結果的には、現行政策のプラス面を軽視し、戦後外交の矛盾や欠点の指摘、基地問題等に対する国民感情を受け止めることに終始し、それが民主党の外交政策の主軸になった点は否めない。
その一例が「普天間基地の県外・海外移転」ではあるが、もともと実行できる展望を持っていたわけではないにもかかわらず、沖縄県民の期待を煽り、その上で失望させた罪は大きい。むしろこの間に外交全般にわたって国民の民主党政権に対する期待は色あせ、米国からは信頼を失い、良好な関係を目指した中国やロシアは逆に日本に対して強硬な姿勢に出るという、最悪の結果になったのである。この間、日本は経済外交でも後れを取り、日本丸は漂流し続け、日本の相対的な地盤沈下はさらに進んだ。
中国との関係でいえば、民主党は自民党時代の対米依存一辺倒から、中国寄りの姿勢を取り、一時的には中国の対日姿勢は軟化した。しかし中国に対しては、中国国内の政治や領土問題がからむと、民主党の良好な関係構築を目指す一面的な対中政策だけでは、何の役にもたたない国際政治の現実を知ることとなった。ロシアとの関係では、日ソ共同宣言を結んだ祖父の思いを抱き、鳩山前首相は、ロシアとの関係改善や北方領土の解決に前のめりになったが、何の具体的な行動にも出ず、逆にロシアを失望させ、今回のメドベージェフ大統領の国後島訪問の一因にもなった。
オバマ政権は、中間選挙の敗北を踏まえ、次の2年間は国内の経済、雇用問題に集中することは必至だ。外交ではアフガン、テロ対策等必要な案件を除き、新たな火種を抱えたくないのが本音である。そこで中国、ロシア、北朝鮮は、内向きになりつつある米国の反応を計算に入れ、日本に対してより強硬な姿勢に出る可能性は強い。日本は、その米国のアジアへの関与が少なくとも後退しないよう、再度、日米の協力関係を強化し、国際社会にも積極的に関わりながら、中国やロシア等に対して、ソフト・ハード両面でけん制できる力を保っておくことが当面の優先政策だ。相手のある外交では、もはや迷走している時間は与えられていない。
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